TOPへ

ブログ

【歯周病は“磨き方”だけでは治らない?】

「続けられる人」と「再発する人」の違いとは

なぜ、毎日磨いているのに歯周病が治らないの?

「ちゃんと歯を磨いているのに、なぜか歯ぐきが腫れる」
「定期検診に行っても、また出血してしまう…」

そう感じたことはありませんか?

実は最近、世界の研究で明らかになってきたのは、
 “磨き方”よりも“心の動かし方”が歯ぐきの健康を左右する ということ。

つまり、「どう磨くか」よりも「どう続けるか」が重要なのです。

新しい考え方:「歯ぐきを守るのは“行動の習慣化”」

2023年、ヨーロッパのストラスブール大学が行った研究(J Clin Med 2023)では、
「心理学を使った行動サポート」が、
歯周病の患者さんのプラーク(汚れ)や歯ぐきの出血を有意に減らしたことが報告されました。

つまり――

“上手に磨ける人”より、“続けられる人”の方が歯ぐきが健康になる。

という科学的な事実が明らかになったのです。

行動が変わると、歯ぐきも変わる

研究では、以下のような「行動の工夫」が効果的でした。

方法 内容 効果
目標を決める 例:「1週間で出血を3箇所減らす」など 継続率アップ
自分でチェックする 鏡を見てプラークを観察・記録する 意識の向上
フィードバックをもらう 衛生士さんと一緒に変化を確認 自信がつく
考え方を変える 「できてない」ではなく「昨日より少し良い」 習慣化しやすい

このように、小さな成功を積み重ねる仕組みが、歯ぐきの安定につながります。

実際にどんな効果があったの?

論文では、21本の臨床研究を比較した結果、
「心理的サポートを取り入れた患者さん」の方が、
次のような結果を示しました。

  • プラーク(歯の汚れ)が最大60%減少
  • 出血が減り、歯ぐきの炎症が軽くなる
  • 習慣が長く続く傾向がある

一方、「磨き方だけを指導したグループ」では、
数か月後に元に戻ってしまうケースが多く見られました。

つまり、行動を支える“仕組み”がある人ほど、歯周病が安定しやすいということです。

心の習慣が“歯ぐき”を守る理由

人の行動は、「意識」よりも「感情」で決まります。

たとえば…

  • 「歯ぐきの腫れが減った!」という達成感
  • 「前より褒められた!」という喜び
  • 「今日もできた!」という自己肯定感

これらの小さな体験が、“また続けよう”という気持ちを作ります。

心理学ではこれを「自己効力感」と呼び、
この感覚が高い人ほど、歯磨きや通院を長く続けられることが分かっています。

「続けられるケア」を作る4つのステップ

歯ぐきを長く守るには、以下の4ステップを意識しましょう。

STEP 1:今の自分を“見える化”する

鏡や染め出しで、どこが磨けていないかを把握。
「現状を知る」ことが出発点です。

STEP 2:小さな目標を決める

「毎日夜だけはフロスを使う」「次の検診までに出血を半分に」など、
“できる範囲”で目標設定を。

STEP 3:記録してみる

歯磨きチェック表やアプリで記録すると、“できた実感”が残ります。

STEP 4:定期的にフィードバックをもらう

歯科医院で自分の変化を見せてもらうことで、
「やってよかった」が次の行動につながります。

スマホでも“行動変容”できる時代に

研究では、スマートフォンを使ったサポートも効果的と報告されています。

  • LINEやSMSでの「セルフケアのリマインド」
  • アプリで歯磨き時間を可視化
  • AIブラシで磨き残しを自動解析

4か月の調査で、これらのデジタルサポートを使った人の方が
出血スコアが有意に改善したという結果も出ています。

歯科医院でできる“心のサポート”

行動変容の仕組みは、患者さん一人では限界があります。
そこで大切なのが、医院との二人三脚です。

医院側ではこんな取り組みが効果的です:
  • スタッフ全員での統一したサポート体制
  • 写真やスコアでの進捗確認
  • 「できたこと」をしっかり褒める文化づくり

歯ぐきを守るのは「技術」ではなく、「信頼関係」でもあるのです。

歯周病は“再発する病気”ではなく、“改善し続けられる病気”

多くの人が「歯周病=一生付き合う病気」と思いがちです。
しかし実際は、“正しい行動を続ければコントロールできる病気”です。

毎日のセルフケアと、医院でのメンテナンス。
この2つを「苦痛」ではなく「習慣」にできた人こそ、
歯ぐきを長く守ることができます。

今日からできる、3つの行動ヒント

  1. 夜だけでもフロスを使う
    寝ている間に菌が増えるため、夜のケアが最も重要。
  2. 鏡を見て“確認して磨く”
    なんとなくではなく、“見る意識”を持つことで上達します。
  3. 次の検診日をカレンダーに入れる
    「行こうと思ったら行く」ではなく、“予約で習慣化”するのがコツ。

まとめ:歯ぐきの未来を変えるのは、あなたの「行動」

歯周病は「年齢」でも「遺伝」でも、
毎日の小さな選択の積み重ねで未来が変わります。

  • 正しい磨き方 × 続けられる習慣
  • 行動を支えるサポート × 自分の努力の見える化

この2つが納得すれば、歯ぐきの健康は確実に変わります。

参考:科学的根拠

Vilar Doceda M, Petit C, Huck O.
歯周炎患者における口腔衛生改善のための行動介入:系統的レビュー.
J Clin Med. 2023; 12(6):2276.
doi: 10.3390/jcm12062276